上皮間葉転換(じょうひかんようてんかん、英: Epithelial-Mesenchymal Transformation)または上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition)、略称EMTは、上皮細胞がその細胞極性や周囲細胞との細胞接着機能を失い、遊走、浸潤能を得ることで間葉系様の細胞へと変化する過程である。上皮間葉転換は中胚葉形成や神経管形成などを含むさまざまな発生過程に重要な役割を果たしている。また、創傷治癒や組織の線維化、がんの浸潤、転移などにおいて出現していると考えられている。
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Eカドヘリンの消失は上皮間葉転換において不可欠な事象と考えられている。Eカドヘリンを抑制することができる多くの転写因子をEMT-TF(上皮間葉転換誘導転写因子)と捉えることができる。
COPDと肺がんの関連性は、喫煙者の小気道の線維性狭窄・閉塞による気道閉塞という、よく知られた小気道リモデリング病態に関連しているが、喫煙、COPD、肺癌の間の特異的な連関過程は、気道上皮を活性化する活性酸素のカスケードを経て、基底(幹)細胞の遺伝子再プログラムに至る経路であることを示す証拠が増えつつある。そして、成長因子の産生、戦略的キナーゼ、転写因子の動員を引き起こし、最終的には上皮間葉転換(EMT)という共通のメカニズムに至り、EMTは、筋線維芽細胞の増殖と、気道壁の肥厚を伴う二次的な過剰かつ異常なマトリックスタンパク質の産生を伴う。EMTは、多くの上皮性癌に共通する悪性腫瘍の病因として認識されており、COPDと肺癌発症の間の病因論的な関連は、メカニズム的にもっともらしい
Air Pollution as a Risk Factor for Lung Cancer: Potential Mechanisms
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Volume 205, Issue 3
https://www.atsjournals.org/doi/full/10.1164/rccm.202108-2010LE
はじめに
これまでの報告では、epithelial–mesenchymal transition (EMT) :上皮間葉転換は小気道線維化病態に寄与する活発なプロセスであることが示されている。Myofibroblasts:筋線維芽細胞は、過剰で変化した細胞外マトリックス(ECM)を分泌する高活性な線維化促進細胞である。ここでは、喫煙者とCOPD患者における小気道筋線維芽細胞の存在と気道リモデリング、生理学、EMT活性との関連性を検討した。研究方法
非喫煙者、肺機能正常者、COPD患者および元喫煙者の肺切除標本を抗ヒトα-平滑筋アクチン(SMA)、コラーゲン1およびフィブロネクチンで染色し、網状基底膜(Rbm)、前床および外膜においてαSMA+細胞をRbmおよび前床の1mm2あたりとした。コラーゲン-1およびフィブロネクチンは、正常値からの変化率として提示される。気道の厚さを含むすべての解析は、Image-pro-plus 7.0を使用して測定した。結果
すべての病態群で、非喫煙者対照と比較して、上皮下固有層(特に)および外膜の厚さが増加していることが判明した。喫煙者群、COPD群ともに非喫煙者対照と比較して、上皮下Rbm、固有層、外膜でαSMA+筋線維芽細胞の増加が観察された。さらに、固有層における筋線維芽細胞集団の増加は、肺機能の低下、固有層の肥厚、ECMタンパク質の沈着量の増加、そして最終的には上皮細胞におけるEMT活性と強く関連していた。結論
これは、COPDにおける小気道筋線維芽細胞の局在に基づく初めての系統的な特徴づけであり、他の全気道構造、肺機能、ECMタンパク質の変化との間に統計的に有意な相関がある。最後に、このような変化にはEMTが関与している可能性が示唆された。
Increased myofibroblasts in the small airways, and relationship to remodelling and functional changes in smokers and COPD patients: potential role of epithelial-mesenchymal transition
ERJ Open Res. 2021 Jun 7;7(2):00876-2020. doi: 10.1183/23120541.00876-2020. eCollection 2021 Apr. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8181830/